緑内障

緑内障の症状

眼圧が上昇することによって、視神経に異常が起こり視野欠損や視力障害が起こる病気を緑内障といいます。
徐々に進行するため、自覚症状が乏しく初期の段階ではなかなか気づくことができません。
次第に視野が狭くなり、見える範囲が狭くなっていくのが主な症状とされていますが、実際には進行中期でも視野の一部のぼやけを自覚するにとどまる事が多いです。
放っておくことで失明に至ることがあり、日本人の中途失明原因1位の疾患とされています。
早期に発見し、適切な治療を始めることで緑内障の進行を抑えることができ、失明の危険性を回避できます。

緑内障の症状

 

緑内障の原因

緑内障の原因眼球の中を循環する液体(房水)の出口が狭くなり、眼圧の上昇、眼内の房水の循環動態の不具合が原因で緑内障が引き起ります。この房水は、眼圧の調整に重要な役割を担っています。眼圧上昇をきたす緑内障には、原発性開放隅角緑内障、閉塞隅角緑内障・続発緑内障・発達緑内障とありますが、眼圧が上がるメカニズムはこれら緑内障の種類によって異なります。

緑内障の原因
緑内障の原因

一方で、眼圧が正常でも緑内障になる場合があり、これを正常眼圧緑内障といい、日本人では緑内障の大多数を占めます。40代以降の緑内障の潜在有病率は4%を超えるといわれており、緑内障の発症リスクは誰にもあるため発症早期に診断をつけ治療を開始することが求められます。

自覚症状のない緑内障

なかなか気付けない緑内障

緑内障初期は、はっきりとした自覚症状がありません。しかも、ゆっくりと進行するため、なかなか初期に自分で気付くのは難しいとされています。また、片側の眼だけに症状がある場合、もう片方が視野を補うために自覚できないケースもあります。ご自身で視野障害に気が付いたときには既に進行してしまっていることが多く、視力低下や失明に至ることもあります。進行する早さは個人差がありますが、正常眼圧緑内障の場合、末期に至るまでに20~30年ほどかかると考えられています。視力低下等の異変を感じている方は、お早めに当院にご相談ください。

早期発見・早期治療

白内障は手術を行うことで症状が改善しますが、緑内障は手術治療しても現状を維持することしかできません。よって、とても重要なのが早期発見・早期治療です。緑内障を早期発見できれば、目薬をさすだけでこの先健康な方と同じ生活を送ることができます。
緑内障は、眼底検査によって初期のうちに発見できる確率が非常に高く、当院でも初期の緑内障を捉えられる機器を導入していて、緑内障の早期発見に努めています。

定期検査が必要

緑内障の検査には、眼圧検査・視野検査・隅角検査・眼底検査・光干渉断層計(OCT)があります。
緑内障の治療において、定期的な検査が必要なのは視野検査で、治療効果を判定して眼圧をどれくらい下げれば良いのかという基準を確認します。視野検査は、小さな光が見えるか見えないかを患者さんに判定してもらう簡易的な検査です。眼圧測定は、日によって変動があるため1日ではなく、年に数回測定して傾向と次の治療に必要な基準を把握しなければなりません。したがって、緑内障の治療が必要な方は、点眼治療と並行して2~3カ月に1回の眼圧検査、緑内障の疑いがある方は半年~1年に1回の検査が必要です。
隅角検査では、緑内障の種類を判断します。点眼麻酔をした上で、専用コンタクトレンズを眼に当てて隅角を観察していきます。隅角が開いているか閉じているかで病型を判定します。

緑内障の治療方法

緑内障によって、一度侵された視神経は回復できません。緑内障の治療での基本的な考え方は、「症状を悪化させないこと」です。高くなった眼圧を治療によって下げることで、進行を防ぐことが可能です。

点眼治療

点眼薬を用いて眼圧を低く保つようコントロールします。緑内障の種類や重症度、眼圧の高さ、また緑内障の進行度や患者さんの点眼習慣に合わせて処方されます。場合によっては、複数の点眼薬を組み合わせることもあります。点眼薬の種類には、房水の排出を促す作用、房水の量を減らす作用、両方の作用があるものがあります。

手術治療

視野の異変が進行しているケースや、点眼治療を行っても十分に低い眼圧が得られなかった場合、手術を行います。

緑内障のレーザー治療

レーザー虹彩切開術(LI)

瞳孔ブロックによる原発・続発閉塞隅角緑内障、急性緑内障の治療法として代表的なのがレーザー虹彩切開術です。麻酔の目薬をした後に、レーザー用のコンタクトレンズを付けて行い、瞳孔ブロックを解消し、前後房の圧力差をなくし隅角を拡大していきます。レーザー光線で虹彩に小さな穴を開け、房水の流れを改善し、緑内障の悪化を防ぐのが一番の目的です。レーザーを照射する場所は、普段はまぶたに覆われている上側、或いは鼻側の虹彩周辺部です。術後、炎症するため少し霞むことがありますが、数日で改善します。片側の眼で瞳孔ブロックがある場合は、両方の眼が同じようになる可能性が高いため、治療後にもう片側の眼にも予防を目的にレーザー虹彩切開術を行います。

レーザー線維柱帯形成術(SLT)

慢性緑内障の初期、中期に行われる手術です。原発開放隅角緑内障・続発開放隅角緑内障(ステロイド緑内障・落屑緑内障・色素緑内障)等、混合型緑内障の治療に適応します。房水の流れ出るとき、最も抵抗となっている部分(繊維柱帯)にレーザーを照射し、房水の流れを良くします。術後に出血するために多少見にくくなる場合がありますが、2~3日で改善します。

緑内障の手術

下記の二つに大別されます。

トラベクロトミー

房水の排水溝にあたる線維柱帯を切開して房水の流れをスムースにする機能再建術です。緑内障の線維柱帯の目詰まりに対して、薬物治療やレーザー線維柱帯形成術を行っても十分に眼圧が下がらなかった場合に行われる手術です。当院では眼球の内側からマイクロフックや糸を用いて線維柱帯を切開し、目詰まりの解消と、房水流出促進を図ります。眼圧を下降させる奏効率は、70%程度ですが手術に伴う合併症が遥かに少ないので比較的安全な手術です。

濾過手術(トラベクレクトミー、チューブシャント手術)

トラベクロトミーと同様に、緑内障の手術として広く行われている手術法です。もともとの房水の排水溝にあたる繊維柱帯の機能回復が困難な場合、強膜に新しいバイパスを作成し、前房と結膜下組織の間に房水の流出を促して眼圧を調整する手術です。手術後の合併症にも有効な薬剤が併用され、手術成績が上がっています。濾過量の調整には、レーザー切糸術を行うことで、手術後の眼圧調整が可能になり、低眼圧(過剰濾過)による合併症を回避します。多くの症例によって、長期の眼圧コントロールが維持できると報告があります。

白内障緑内障同時手術

白内障緑内障同時手術白内障と緑内障を併発している場合は、患者さんの眼の負担を考慮し、同時に手術を行います。緑内障の原因によっては、白内障手術を行うことで閉塞隅角が解消し、眼圧を下げる効果が見込めます。

緑内障Q&A

緑内障は点眼治療でも治りますか?

緑内障を一度発症してしまうと治るということはありません。基本的に症状の進行を防ぐ、悪化させないことが治療の目的となります。点眼治療は、緑内障の進行を食い止めるために続けて行っていきます。多くの患者さんは、点眼治療を継続することで日常生活を送ることが出来ます。

緑内障が進行すると失明してしまいますか?

緑内障を放置しておくと失明する恐れがあります。また、日本人の中途失明の原因疾患の1位は緑内障です。早期発見・早期治療によって失明を避けることが可能です。また、片側の眼に緑内障が進行している場合、もう片方の眼で補えるため、放置してしまう方も多いですが、その状態を続けているともう片方の眼にも相応に緑内障が進行してしまいます。ここまでいくと、治療しても思うような結果が得られない場合があるので注意が必要です。

緑内障は手術で治りますか?

緑内障の場合、手術治療でも点眼治療と同様に、疾患の進行を止めたり、悪化を防ぐことが目的であるため、失われた視野を取り戻したり、緑内障の症状から解放されることはありません。点眼治療を継続して行っていても、病気が進行することがあり、その場合は手術を実施します。手術によって、眼圧が下降すれば将来にわたって点眼薬を減らしたり視野障害の進行を食い止める効果が期待できます。

緑内障でも白内障手術を受けることはできますか?

受けられます。濾過手術に関してはすでに白内障手術を受けた方のほうが緑内障の管理がしやすいとされており、また白内障手術によって眼圧降下が実現し、点眼数を減らせるケースもしばしば見られます。従って白内障と緑内障との両方にお困りの方はトラベクロトミーと白内障手術の同時手術をお勧めする事も多いです。

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