多焦点眼内レンズ(老眼手術)

多焦点眼内レンズについて

多焦点眼内レンズは、外からの光を距離別に振り分けて、2つ以上の距離にピントを合わせられます。私たちの眼は、水晶体の厚みを変化させてピントを調節していますが、白内障の場合は、このピントを合わせるレンズの役割を果たす水晶体が濁ってしまいピントを合わせることができず、見えづらくなります。
眼内レンズは、シリコンやアクリル製のため、水晶体のように厚みを変えることができないため、単焦点眼内レンズでは遠方または近方のどちらかにしかピントを合わせられず、手術後は老眼鏡の装着が必要でした。
多焦点眼内レンズは、大きくわけて遠方と近方の2か所、遠方と近方と中間距離の3カ所にピントが合うようになっているので、手術後にメガネ装用回数を減らしたい方にお薦めです。
多焦点眼内レンズは、2007年に日本国内でも使用が認められ、老眼矯正白内障手術にも活用できるレンズとなりました。

多焦点眼内レンズと単焦点眼内レンズの比較

多焦点眼内レンズと単焦点眼内レンズはそれぞれ見え方が異なり、以下のような特徴があります。

多焦点眼内レンズ

多焦点眼内レンズ遠方と近方、2つ以上の距離にピントが合うので、術後の眼鏡装用への依存度を減らすことができ、術後に眼鏡を使いたくない方にお薦めのレンズです。しかし、単焦点レンズと比較してコントラストが低く、見え方のシャープさがやや劣ります。

単焦点眼内レンズ

ピント調節力がないので、ピントを合わせたい距離を予め決めて、そこだけにピントが合うレンズです。ピントが合う距離では、多焦点レンズよりもシャープに見えます。ピントが合う距離以外では、眼鏡でピントを調節します。パソコン等、一定距離で見る仕事が多い人や細かいものを見ることが多い人にお薦めのレンズです。

単焦点眼内レンズ
単焦点眼内レンズ
正常な見え方
正常な見え方正常な見え方
白内障の見え方白内障の見え方白内障の見え方
多焦点眼内レンズ多焦点眼内レンズ多焦点眼内レンズ
単焦点眼内レンズ(遠く)単焦点眼内レンズ(遠く)単焦点眼内レンズ(遠く)

当院で取り扱っている多焦点眼内レンズ

保険診療・選定療養・自由診療とは

現在、多焦点眼内レンズには、選定療養適用の眼内レンズと自由診療の眼内レンズがあります。
選定療養適用の眼内レンズ(国内認可された眼内レンズ)では、手術にかかる費用は単焦点レンズと同じく健康保険適用となるが、多焦点レンズにかかる代金は別途自己負担となります。国内認定のレンズを選択する場合は「選定療養」を利用した方が経済的負担が少なくなります。より高性能な眼内レンズ(国内未認可)のレンズを使用する場合は、自由診療となります。上記の図をご参照ください。

  Intensity Pan Optix テクニスシナジー
レンズ Intensity Pan Optix
タイプ 回折型 回折型 ハイブリッド型
ピントの数 5焦点 3焦点 連続焦点
近方視の焦点距離 130cm
80cm
60cm
40cm
30cm / 60cm

手元約30㎝から

遠方までの連続

した広い明視域

乱視矯正
医療費 自由診療 選定療養 選定療養

※横スクロールで全体を表示

  テクニス
シンフォニー
アクティブ
フォーカス
テクニスマル
チフォーカル
レンズ テクニスシンフォニー アクティブフォーカス テクニスマルチフォーカル
タイプ 回折型 回折型 回折型
ピントの数 焦点拡張 焦点拡張

2焦点

近方視の焦点距離 66cm 50cm 30cm
40cm
50cm
(3種類)
乱視矯正 ×
医療費 選定療養 選定療養 選定療養

多焦点眼内レンズの費用について

※自由診療となり、健康保険適応外です。

多焦点眼内レンズ(選定療養) 片眼:250,000円(税込)~
多焦点眼内レンズ(自由診療) お問合せください

※眼内レンズの種類によって費用が異なりますので、手術を行う前に詳しい金額についてご説明いたします。

※横スクロールで全体を表示

多焦点眼内レンズの注意点

眼鏡の使用頻度

両目に多焦点眼内レンズを挿入した人の約8割以上は、眼鏡を全く使用せずに日常生活を送ることが出来ています。単焦点眼内レンズに比べて、老眼鏡を使う頻度が大幅に減っているのが特徴ですが、薄暗い場面や近距離のものを見なければいけない時、ごく小さなものを見る時は、約1割強の方が老眼鏡を装着されています。

術後、慣れるまでの期間

多焦点眼内レンズの挿入手術後は、慣れるまでに少し時間がかかる場合があります。多焦点眼内レンズは、光や映像の入り方に特性があるので、脳(中枢)が処理に適応するまでに時間がかかります。若い人よりも、高齢の方(特に75歳以上の方)ほど長く時間を要する傾向にあります。

多焦点眼内レンズの適応

多焦点眼内レンズの適応については、個人差があり、それぞれの症状やライフスタイル、職業等によっても異なります。目の健康状態をはじめ、角膜の形や乱視の程度、眼球の奥行、斜視の有無、近視度合いの左右差、職業、ライフスタイル等、あらゆる面からの問診と検査を行い、医師が適応を判断していきます。
多焦点眼内レンズは、誰にでも合うわけではありません。白内障以外の緑内障や網膜の病気がある方には適応しないケースもあります。また、細かいものを見る職業の方にも不向きと言われています。
そのため、一度当院にご来院いただき、検査を受けてください。丁寧な問診を行い、多焦点眼内レンズが適応とならなかった場合は、別の方法で明視域の拡大を検討していきます。

多焦点眼内レンズの独特な見え方

コントラストの低下や光の滲み等、多焦点眼内レンズの独特な見え方が気になる場合があります。多くの場合、術後の時間経過と共に気にならなくなりますが、職業によってはこの独特の見え方が問題になることがあるので、慎重に患者さんに確認させていただきます。

老眼手術のリスク

手術後のリスクとして、患者さんがイメージしていた見え方とは違ってしまうケースがあります。手術したけれど期待していた見え方と違い、単焦点眼内レンズに入れ換えることもあります。患者さんの目の状態や職業、ライフスタイルを十分に考慮しながら、術前にしっかりと相談して頂くことをお薦めしています。

老眼手術について

老眼手術の際には、患者さんの日常生活や職業、ライフスタイルに応じて、術後に希望される見え方を十分に伺いながら、患者さんに最適な眼内レンズを選定しています。

老眼について

老眼の主な症状は、加齢に伴って近くのものが見えにくくなるのが特徴です。「細かい字が読みにくくなった」、「新聞や雑誌等は遠くに離さないと見えない」等、年齢を重ねていくうちに見え方に異変を感じている場合は、老眼になっている可能性があります。発症には個人差がありますが、40歳頃から現れる人が多いとされています。

老眼の原因

加齢に伴って、水晶体が硬くなり、眼のピントを調節する機能が衰えてしまうのが主な原因です。水晶体の老化は、実は10代から始まっていますが、40歳を過ぎると「近くの文字が読みにくい」といったように、見え方の異変によって老眼になっていることに気付くことが多いようです。

症状について

以下のような症状が目立ち始めたら、老眼の可能性があります。気になる症状がある方は、当院までお気軽にご相談ください。

  • 近くの文字、細かい文字が読みにくい
  • 新聞や雑誌を遠くに離さないと読めない
  • パソコンやスマートフォン等の画面を長時間見ていると文字が霞む
  • 手元から遠くに眼を向けるとなかなかピントが合わない
  • 眼が疲れやすい
  • 眼が痛い
  • 頭が痛い

老眼の治療方法

老眼の最も一般的な対処法として挙げられるのは、老眼鏡を作ることです。眼科を受診して、最適な眼鏡を作りましょう。その他の治療方法は、多焦点眼内レンズを挿入することです。ピントを調節する機能が衰えてしまった水晶体の代用として多焦点眼内レンズを入れ、老眼を改善していきます。レンズの見え方に適応できれば、遠方と近方の両方が見えやすくなり、眼鏡への依存度を低下させることができます。

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